自分

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俺は今年の春、高校生になった。 見上げれば、見渡す限りの澄み渡った青空。 瞼を閉じれば、穏やかに流れる風が心地良い。 「入学式。」 この言葉を耳にすれば、安易に思い付くのはそんな光景。 足取り軽く校門を潜れば、途端に襲われる緊張感。 沢山のことに思いを馳せながら、胸を焦がす。 誰もが浮き足立って、胸をときめかせるめでたい日。 だけど実際は違う。 見上げれば、不吉を思わせる漆黒の雨雲が空を覆っているし、風なんて心地良くもない。 むしろ生暖かく、気持ち悪いくらいだ。 土砂降り。 これが現実。 そんでもって、今は教室でホームルームという名の、ありがた~い入学祝いの長話。 ああ、もうイライラしてきた。 早く終わんねぇかな。 そう思って、ふと窓の外へと目を向ける。 外はやはり、この日に似つかない暗雲の雨雲が、ひたすら大量の雨を降らせていた。
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