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―着いてきた?
いや、この状況からしてやはり彼女が幽霊だという事は確定なわけで。
その事から導きだされる漢字変換の答えはただ一つ。
「憑いてきた!?」
「はい!」
すかさず満面の笑みで頷く彼女。
―いや『はい!』じゃねぇよお前ちょっと待て。
悠は一瞬思考が停止し、次の瞬間脱兎の如く駆け出していた。
物凄い速度で階段を駆け上がり、部屋に入ると急いで鍵を閉める。
「ふ…ふはははははは!見たか!平成のウサインボルトと呼ばれたこの俺の実力を!」
「あの…ボルトは平成です…」
「ひ!」
後ろから的確なツッコミが届き、恐る恐る振り向く。
―はい、いました。
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!もう遊び半分で心霊スポットなど行きません!後生ですから呪わないでください祟らないでくださいテレビから出てこないでください俺の携帯に俺の番号で電話しないでくださいいいいい!」
動揺し、叫び始めた悠に彼女はおずおずと話しかけようとする。
「あの…」
「いや本当にすいません申し訳ない遺憾の意ぃいい…!」
「あの!」
「は、はい!」
彼女に強い口調で言われ、やっと悠の口が止まる。
彼女は少し照れたように話し始めた。
「ぜ、全然祟るとかそんなつもりじゃないんです…。そんな事絶対しないですし、そもそも祟りだとか、呪いだとか…す、凄く怖いじゃないですか…」
―what?
それって幽霊の専売特許じゃなかろうか?
呪いを怖がる幽霊なんて初めて見た…。
いやまぁ幽霊自体見た事ないけど。
それと同時に、少し冷めた悠の頭に別の疑問が浮かんできた。
「じゃあ、どうしてここに…?」
その問いに、彼女は急に深刻な面持ちになる。
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