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「それで、なんで家に?」
悠は一番気になっている事を口にした。
申し訳なさそうに彼女は答える。
「あの…け、怪我しちゃいましたよね?」
「ん…まぁ確かに、したと言えばしたけど…。擦り傷がちょっとと頭にでかいたんこぶ出来ただけだし…」
「そ…そんなに…あの…本当にごめんなさい…」
彼女が今にも泣きそうな顔でうつむく。
「いや…そんなにって、ホント軽いケだから大丈夫だって!」
「でも…私お詫びすることに決めました!」
―こ、これは…嫌な予感がする。
「…一体何をすると?」
「私…暫くの間ここで家事を手伝います!さっきから様子を見てたら、ご両親もいないようですし…。私を助けようとして怪我をしたんだから、私に責任があるし…」
―い、いやいやいやいや!
話が飛躍しすぎて頭の整理が出来ない…。
俺が彼女を助けようとして怪我したから、彼女がお詫びにこの家の家事を手伝う?
「ひ…日帰りですか?」
「お泊まりです!」
―要するにあれか。
俺とこの夢にまで出てきためちゃくちゃ可愛い女の子が同じ屋根の下生活するのか?
まるでギャルゲーのプロローグではなかろうか?
ま…まぁ…幽霊…なんだけど…。
「ちょ、ちょっと待って、流石にそれは…」
「やっぱり…嫌ですか…そうですよね…急に…」
彼女は少し目に涙を溜めながらこちらを見る。
―は、反則、反則でございます!
そんな仕草で言われたら、世の中の男は断れませぬ!
レッドカード、退場!
い、いや退場しちゃ駄目!
「い…いや、そんなことは…」
彼女の仕草に心を動かされ、思わず曖昧な答えを返してしまう。
「やった!これでも私、掃除とか洗濯とか得意なんです!りょ、料理はちょっと…苦手だけど…」
名も知らぬ彼女は嬉々として話し始める。
悠はその様子に見とれていた。
―一人暮らしに不便はないとはいえ、流石にずっと一人っていうのは寂しいし、話し相手が欲しくなる時もある…。
そもそもこんな綺麗な女の子と一緒に住める機会なんて一生に一度のチャンスかもしれないし、さっきの話を聞く限りじゃとてもじゃないけど悪い霊とかには思えない…。
それにこんな喜ばれたら…。
なんでだろう…彼女の笑顔を見ているだけなのに、何故かなにも否定できなくなってくる。
断れないや…。
なぜ断る事ができないのか、悠自身でもわからなかった。
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