第三章

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―いやしかし、あそこまで朝日の料理が殺人兵器だとは…。 昨日確かにちょっと料理が苦手って言ってたけど。 あれでちょっとなら、凄く料理が苦手な奴は砂糖と塩で核反応を起こして爆発するに違いない。 フライ返しでオムレツを裏返す。 本日の朝食はパンにオムレツ、サラダ。 ―卵焼きであそこまで超料理を作れる彼女に、野菜を切って並べるだけのサラダを作らせてみたい。 だが、悠は頭をふってその想像を遥か彼方、地平線の果てまで吹き飛ばした。 「朝日の破壊力を甘く見てはいけない気がする…」 出来た料理をお盆に乗せ、居間に入る。 その瞬間、悠はたじろいだ。 「な…なんなんだこの負のオーラは…」 居間に入った瞬間、まるで部屋の中が紫になったかの様な錯覚を起こすほどに負の感情が渦巻いている。 擬態語で表すと、どよん。 擬音語で表すと、ぬぉん。 そして部屋の隅には、膝を抱えて踞る朝日がいた。 「げ…」 ―正直…怖い。 可愛いから忘れてたけど…やっぱ朝日は幽霊なんだな。 今までの快活な姿からは想像出来ない程、雰囲気が暗くなっている。 流石は一般的に世を震え上がらせる存在なだけあって、負の感情を出す事については負け無しである。 「あの…あ、朝日…さ…ん?」 長い黒髪で顔は隠れて見えないので、より一層怖さを引き立てる。 貞子然り、カヤコ然り。 黒髪というのはアジアンビューティーの象徴であると共に、霊達の恐怖のマストアイテムなのである。
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