第三章

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―び、ビリーだ。 ビリーがいる。 どのビリーかって、一時期この非軍事国家日本で軍隊式エクササイズブームで世間を席巻したあのビリーだ。 迷彩のパンツにタンクトップ、汗かカーワックスか分からないような輝きを放つ肌の彼だ。 「あ…あぁ…」 悠はその場で膝を付いた。 ―あ…あれほど可愛かった朝日が…。 俺の初恋の人が…。 う、腕をぶん回しながら…。 「ワンモアセッ!」 姿形はまぎれもなくビリーなのだが、声はしっかり朝日なので気持ち悪いを通り越して恐怖さえ感じる。 ―あ、あれ? 朝日がビリーでビリーが朝日で? あれれれ? あの病院で月明かりに照らされていた可憐な少女は…? いやもしかしてそれ自体がビリーだったのか? 月明かりに照らされたビリーだったのか? あのほのかな輝きは汗の反射で? 俺はビリーを助けたのか? あんな戸棚なんて一蹴りでモルジブ辺りまで飛ばせそうな彼を? そしてビリーが家に来たのか? う…うふふふ…。 もうなんか全てがどうでもよくなってきました…。 うふふ、うふふふふふふ…。 「あの…悠さん?」 ―あはは、ビリーが話しかけてくる…。 僕は入隊しませんようふふふ…。 「悠さん!?」 朝日の強い声悠はハッと我に返る。 目の前には汗ばんだビリー…ではなく、元通りの可憐な少女が立っていた。 「えへへ…こんな風に姿を変える事だってできるんです!」 「あのさ…一つだけ、聞いていい?」 「なんですか?」 「な…何故、何故にビリーだったの?」
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