第四章

4/9
148人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
―昔、隣の家に自分より一回り小さい少女がいた。 欧米人とのハーフで、白銀の長く綺麗な髪と透き通った青い瞳が特徴的な女の子。 幼い心は残酷である。 容姿が違うから、という理由で周りの子供達は少女を避けた。 だから、少女はいつも一人。 彼女の目に映る空はくすんだ色。 遠い目をしていつも灰色の空を見つめていた。 その日、悠は落ち込んでいた。 ずっと遠くから見ていた、いつも気になっていた女の子に恋人がいる事がわかったのだ。 学校への通学途中にすれ違うだけの、名前も知らない関係ではあったが、悠はそれを密かに楽しみにしていた。 それは悠が、異性に対して初めて抱く感情だった。 だが、彼女が幸せそうな笑みを浮かべながら男と歩いているのを見かけた時、悠の思いは無惨に打ち砕かれた。 公園のブランコに揺られながら一人、ため息をつく。 「ねぇ、そんな所にいつまでもいると、風邪引いちゃうよ?」 「え…?」 声をかけられたその方向にいたのは、白銀の髪の少女だった。 それが、彼女との出会い。 悠は二階の窓から寂しそうに空を見上げる彼女の姿を幾度か見た事があった。 「私、ミツキ」 幼い声で彼女は名前を名乗る。 そして少女はおもむろに隣のブランコに腰掛ける。 寂しそうに揺れながら、二人は暫く会話をしていた。 悠自身の事や、ミツキの事。 お互い隣の家だというのに、知らない事だらけ。 二人はいつの間にか寂しさなど忘れ、夢中で話していた。 彼女が急に聞いた事が、悠の心には今でも残っている。 「悠は、私の事…怖くない…?」 「え?」 初め、悠はミツキが何を言っているのかわからなかった。 「皆はね…私の事、怖いって言うんだ…」 そして悠は気づいたのだった。 その日本人離れした風貌は、他の子供からすれば異端でしかないことに。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!