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悠は、優しくミツキの銀髪を撫でる。
「全然怖くないよ。と、いうよりも俺は素敵だと思うけどな」
「え…?」
予想もしない答えだったのか、ミツキはきょとんとしてこちらを見る。
「本当に…?」
不安そうにミツキが確認する。
「ああ、本当に。とっても綺麗だよ。もし、他の人がそれを怖がっていたとしても、俺は絶対にそんなことは思わない」
彼女は赤面し、照れた様に顔を伏せる。
そして…
ぱぁ、と満面の笑顔を浮かべて、嬉しそうに悠に抱きつく。
「ちょ、み、ミツキ!」
「えへへ…!ありがとう!お兄ちゃん!」
―…あれ?
「今…お兄ちゃんって…?」
「うん…。あのね、ミツキはお兄ちゃんもお姉ちゃんも弟も妹もいないんだ…。だからね、悠に私の…お兄ちゃんになって欲しいなぁって…やっぱり…駄目かな…?」
ミツキと話をしている間、彼女の顔に時々影が差していることに悠は気づいていた。
友達もおらず、いつも一人で時を過ごしている彼女が心に抱える闇は、きっと深く大きいものなのだろう。
―だから。
俺は、この幼い少女を守りたい。
仮の兄という立場でもいい。
彼女に温もりを与えてやりたい。
「よし…わかった!ミツキはこれから、俺の妹だ!」
「…ホント?」
ミツキは一気に顔を輝かせた。
「ああ、もちろん。だから、ミツキは俺の事頼りにしていい。もう一人じゃなくていいんだからな」
「うん…やったぁ!悠兄だぁ!」
えへへー、と嬉しそうに笑いながらくるくると廻る。
その度、白銀の美しい髪が風になびいた。
そうして彼女がいる日常が始まった。
家に遊びにきたり、公園で話を聞いたり、勉強を教えたり。
ミツキにもう当初の陰りは見えず、悠自身も彼女に元気を貰っていた。
いつの間にか悠は、ミツキを本当の妹のように思っていた。
だが。
そんな幸せな日常も、永遠には続かない。
それが大きくも小さくも、必ず日常は変化するものである。
しかし、そうだとしても。
二人の日常は、あまりにも早く、あまりにも唐突に、あまりにも大きく変化してしまうのだった。
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