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「ミツキ…?」
現実を告げる、静かな心電図の音。
悠が握ったその手は、温もりを失い始める。
「おい…ミツキ…」
呼びかけても、体を揺すっても、彼女はもう…動かない。
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!ミツキ…冗談はやめろって…お兄ちゃん…いい加減怒るぞ…」
医師達に体を押さえられる。
それを悠ははね除け、ミツキに呼びかけ続けた。
だが、本当は既に分かっていた。
彼女はもう帰って来ないのだと。
自分の事を、お兄ちゃん、そう呼ぶ声はもう二度と聞えないのだと。
あの優しい笑顔は、もう二度と見る事は叶わないのだと。
―俺が…。
俺がミツキを守るんじゃなかったのか…。
「俺は…俺は…ミツキを…守ってやれなかった…!」
―何が…兄貴だ。
やり場の無い怒りがこみ上げる。
握りしめた拳からは血が滲みだし、白い床に赤い雫を落とした。
そして悠は泣いた。
初めて、声をあげて泣いた。
涙が枯れても哭き続けた。
…冷たくなった彼女を、ずっとその腕に抱えながら―
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