第五章

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「ミツキ…今まで、何してた?」 歩きながら彼女に話しかける。 並走しながら歩くミツキは、昔のままの姿だった。 その姿は、ミツキが死んで3年になるという現実を感じさせないものでもあった。 「んーっとねぇ…特になーんにも!」 「な、何もってお前…」 「だって友達なんかもいないし、幽霊の皆ってなんか暗いし…」 「幽霊なんて大体そんなもんだと思いますがね」 「そうかなぁ…だからね!ずーっと一人でブランコとかしてたんだ!」 ―…あ。 そう言えば聞いた事がある。 夜中、草木も眠る丑三つ時に、誰もいないはずなのに勝手に揺れるブランコの怪。 どこにでもある話だと思ってたし、心霊スポット好きの俺も聞き流していたけど、ここら辺ではちょっと有名な話だったな…。 なるほど…犯人はこいつだったのか。 「ミツキ…それ結構噂になってるぞ」 「え?あー…そういえばたまに人がこっち指差してなんか話してたりしたことがあったかも」 ―君はもっと自分自身を自覚せねばなりませんな、うむ。 幽霊だから、夜ブランコ…安易すぎるぜ。 …あ。 「そういえばミツキ…寝るところとかどうしてるんだ?」 ミツキの両親は、ミツキが死んでから少しして家を出た。 その家にいるとミツキの事を思い出してしまうからと言い、ミツキの相手をした事を悠に何度も礼をして出て行った。 今現在は、違う家族がその家には住んでいる。 「うーん…公園…とかかな?あんまり考えた事ないなぁ…」 「公園ってお前…」 「だって、ミツキ幽霊だよ?暑くも寒くもないし、誰かが見てる訳じゃないし…。眠くなったら寝ちゃってたよ」 「そう…なんだ…」 ―駄目だ。 俺がミツキの事、守ってやるって言ったじゃないか。 ずっとそばにいてやるって言ったじゃないか。 ミツキがもう、この世の者じゃなくても、現にこうしてここにいる。 なら、俺が言った事はまだ…。
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