第五章

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「ねぇ悠兄?」 籠の中を覗き込んだミツキが話し始める。  「なんでこんなに多く買うの?」 「…あ」 あまりにもミツキとの再会が衝撃的過ぎて、朝日の事を説明するのを忘れていた。  当然の事ながら、あの人間ブラックホールを養う為に籠の中には大量の食料が積まれている。  「あー…えっとな、家にもう一人…女の子がいるんだ」 「ふーん…」 え…? 今、ミツキの表情を見た瞬間、背筋がゾクリとした。 見間違いだろうか、彼女の表情が一瞬とんでもなく怖く見えたのだ。 瞬きをしてもう一度彼女を見ると、またいつもの笑顔に戻っていた。  「そっかぁ!」 それだけ言って、ミツキはどこかへ走り去っていってしまった。  「あいつ…さっきまで買い物に興味津々だったのにな…」 ミツキが戻ってきた。  「悠兄!」 無邪気な笑顔で笑う彼女。 先程の表情は見間違いだと無理矢理納得し、また買い物を続けるためにカートを押す。  「ん…あれ?」 カートが重い。  疑問に思ってカートを見てみると、まだ何もないはずの下の籠の中には大量の品物が入っていた。  しかも、新巻鮭やペットボトル等、重量級の品物である。 ミツキはもうどこにもいない。 どうやら逃げたようだ。 「あいつめ…」 そして悠は、大量の品物をもとの場所に戻すのにかなりの時間を食い、ミツキに早くも二度目の敗北を喫するのだった。
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