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「ねぇ悠兄?」
籠の中を覗き込んだミツキが話し始める。
「なんでこんなに多く買うの?」
「…あ」
あまりにもミツキとの再会が衝撃的過ぎて、朝日の事を説明するのを忘れていた。
当然の事ながら、あの人間ブラックホールを養う為に籠の中には大量の食料が積まれている。
「あー…えっとな、家にもう一人…女の子がいるんだ」
「ふーん…」
え…?
今、ミツキの表情を見た瞬間、背筋がゾクリとした。
見間違いだろうか、彼女の表情が一瞬とんでもなく怖く見えたのだ。
瞬きをしてもう一度彼女を見ると、またいつもの笑顔に戻っていた。
「そっかぁ!」
それだけ言って、ミツキはどこかへ走り去っていってしまった。
「あいつ…さっきまで買い物に興味津々だったのにな…」
ミツキが戻ってきた。
「悠兄!」
無邪気な笑顔で笑う彼女。
先程の表情は見間違いだと無理矢理納得し、また買い物を続けるためにカートを押す。
「ん…あれ?」
カートが重い。
疑問に思ってカートを見てみると、まだ何もないはずの下の籠の中には大量の品物が入っていた。
しかも、新巻鮭やペットボトル等、重量級の品物である。
ミツキはもうどこにもいない。
どうやら逃げたようだ。
「あいつめ…」
そして悠は、大量の品物をもとの場所に戻すのにかなりの時間を食い、ミツキに早くも二度目の敗北を喫するのだった。
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