第六章

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「私…白血病で死んだんです」 うぉ、軽い感じでスタートしようと思ったのにいきなり超ヘビーな…。  「ああ…だから病院にいたのか」 「はい、だけどあの病院、私が死んでから間もなくして廃病院になっちゃって…」 「なるほど。で、なんで霊になったの?成仏…出来なかったんだよな?」 「はい…それはちょっと言いたくないです…」 「そっか…」 気まずい沈黙が流れる。  「は、はは、暗くなっちゃったな、ごめん!」 肩を叩こうと手を伸ばす。 だがしかし、その手は空を切った。  「え…?」 ハッと朝日が悠を見る。 「あ…。あ、えっとですね…す、すいません、今日はもう寝ますね、おやすみなさい…」 「あ…わかった、うん、おやすみ」 スッと朝日が消えていった。  一人残った悠は、何も触ることが出来なかった手をじっと見つめていた。  ―強く思ったものには触れることが出来るんです― とかなんとか言ってたな…。  それはつまり、俺の事を受け入れてないってことなのかな…。 そりゃ、まだ出会って一日二日だから…でも…。 悠は誰もいない居間でただ一人、自らの手を見つめながら佇んでいた…。 
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