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俺――北郷一刀は、華琳と一緒に町に視察に来ていた。
ただし、いくら乱世が終わったとはいえ、護衛も付けずに来ているわけではない。
華琳以外に、春蘭と秋蘭も付いてきていた。
「だいぶ町も落ち着いてきたわね」
華琳は町の様子を見て回り、感心したように呟く。
ここに本拠を移したばかりの頃とは比べものにならないほど、治安は良くなっていた。
「最近では犯罪も激減してるよ」
「そのようね。報告は聞いているわ」
まあそれは凪や沙和、真桜を含む警備隊のみんなが頑張ってくれたお陰なんだけどね。
「ただ犯罪が減った分、たくさんの人達がこの町に入り込むようになったから、土地が足りなくなってるんだよね」
「……それについても報告を受けているわ。今、改善策を桂花たちに練らせているわ」
「よろしく頼むよ」
「それは桂花に直接言いなさい」
華琳は悪戯な笑みを浮かべ、俺の目をじっと見つめる。
俺は苦笑いで返し、華琳から視線を外し、再び町を見渡した。
人々が町中を行き交い、道の端からは活気の良い声が響き渡っていた。
そこは俺のいた世界で言うと、築地市場の様であった。
一度も行ったことはないけれど。
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