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視察を終え、俺は真桜の元へと向かった。
俺の話を聞いた真桜は、自転車を作ることを引き受けてくれた。
そして数日後。
真桜から完成したとの知らせを受け、俺は真桜の待つ庭へと向かう。
庭には既に真桜がいて、疲れたようにグッタリとしていた。
「あ~、隊長」
「真桜。よくこんな短時間で作れたね」
「うち、頑張ったんよ。誉めて?」
「ああ。凄いよ、真桜は。偉い偉い」
俺は真桜の功績を称える意味を込めて、真桜を撫でてやる。
真桜は満足そうに頷き、心地良さそうに撫でられる。
「それにしても、こんなに便利なものが天の国にはあるんやな。羨ましいわ~」
ひとしきり撫でた後、真桜は自転車の安全確認として最終点検をしていた。
それをしながら、真桜はしみじみと言った感じで呟いた。
「そうだね。自転車は俺のいた国でも重宝されていたよ」
「やっぱり。こんな便利なもん、使わんわけにもいかんしなぁ」
「そうだね。俺くらいの年代の子は、日常的に使ってるよ」
「へぇ。そんなに普及してるんか……よし、異常無しや!」
真桜は手をパンッと威勢良く叩き、満足気に自転車を一瞥する。
「隊長、完成や!」
「おぉ! ありがとう、真桜!」
「ふっふっふ~。これこそ、うちの最高傑作。名付けて『摩馬茅弥梨』や!」
「ま、ママチャリ……」
「ん? 天の国では、こういう形しとる自転車のことを『摩馬茅弥梨』いうって言ってたやんか」
「確かにそうだけど……まあいっか」
「とにかく、や。作ったからにはちゃんと活用して欲しいわ」
「おう。じゃあ早速試運転を兼ねて城内を回ってみるよ」
俺は真桜に礼を述べ、自転車にまたがりペダルに足をかけ、軽く力を込めて走り出した。
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