【自転車】

5/13
前へ
/13ページ
次へ
視察を終え、俺は真桜の元へと向かった。 俺の話を聞いた真桜は、自転車を作ることを引き受けてくれた。 そして数日後。 真桜から完成したとの知らせを受け、俺は真桜の待つ庭へと向かう。 庭には既に真桜がいて、疲れたようにグッタリとしていた。 「あ~、隊長」 「真桜。よくこんな短時間で作れたね」 「うち、頑張ったんよ。誉めて?」 「ああ。凄いよ、真桜は。偉い偉い」 俺は真桜の功績を称える意味を込めて、真桜を撫でてやる。 真桜は満足そうに頷き、心地良さそうに撫でられる。 「それにしても、こんなに便利なものが天の国にはあるんやな。羨ましいわ~」 ひとしきり撫でた後、真桜は自転車の安全確認として最終点検をしていた。 それをしながら、真桜はしみじみと言った感じで呟いた。 「そうだね。自転車は俺のいた国でも重宝されていたよ」 「やっぱり。こんな便利なもん、使わんわけにもいかんしなぁ」 「そうだね。俺くらいの年代の子は、日常的に使ってるよ」 「へぇ。そんなに普及してるんか……よし、異常無しや!」 真桜は手をパンッと威勢良く叩き、満足気に自転車を一瞥する。 「隊長、完成や!」 「おぉ! ありがとう、真桜!」 「ふっふっふ~。これこそ、うちの最高傑作。名付けて『摩馬茅弥梨』や!」 「ま、ママチャリ……」 「ん? 天の国では、こういう形しとる自転車のことを『摩馬茅弥梨』いうって言ってたやんか」 「確かにそうだけど……まあいっか」 「とにかく、や。作ったからにはちゃんと活用して欲しいわ」 「おう。じゃあ早速試運転を兼ねて城内を回ってみるよ」 俺は真桜に礼を述べ、自転車にまたがりペダルに足をかけ、軽く力を込めて走り出した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

270人が本棚に入れています
本棚に追加