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「……まあいいわ。それで我慢してあげる」
華琳はため息をつき、仕方がないといった感じで納得した。
「ごめん」
「いいのよ。無茶なこと言った私が悪いのだし」
「……ありがとう、華琳」
俺は華琳に頭を下げ、自転車の準備をする。
そして、サドルにまたがり、華琳を後ろに座らせる。
「……何だか心許ないわね」
華琳は自分のお尻辺りを見、不安そうに呟く。
確かに、腰が安定していないから、バランスが取りにくいだろう。
「……じゃあ俺にしっかり掴まっててよ」
「……ええ」
華琳は弱い力で俺の胴回りに手を回してくる。
「もっと強く掴まってもいいよ」
俺は胴回りにある華琳の腕を自分側に引っ張る。
華琳の華奢な体が俺にぴったりとくっついてきて、俺は心の音が速くなるのを感じた。
華琳にバレてなければいいんだけど。
「じゃ、行くよ」
「え、えぇ」
少しだけうわずった華琳の声を聞き、俺は自転車のペダルをゆっくり漕ぎ始める。
間もなくして、自転車は安定した速度と軌道にのり、心地よい風を感じることが出来るようになった。
それと同時に、華琳の俺を掴む手の力が強くなった。
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