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その後、部屋へと連れて来られたエリーゼは、落ち着かなかった。
二度と自殺しないようにと監視されている所為でもあるが、何よりも、先程の青年が耳元で囁いたあの一言に、戸惑っているのだ。
(あれは、どういう意味なのでしょうか…?)
(いえ、それよりも…久しぶりにあの人の名前を聴けて、嬉しかったです…)
一言の意味を考えるよりも、もうこの屋敷では、二度と聞く事が叶わないかも知れない愛しい人の名前を聞けただけで嬉しかった。
ポロネーズと云う名前を聞けば、エリーゼが悲しむだろうから、と、自然と誰もその名前を呼ばなくなっていた。
全てはエリーゼの為。
そうは知っていても、やはり、寂しかった。
この世の中の全ての人が、彼と云う存在を忘れてしまったかのようで…。
彼は、確かにこの世に居たのに…。
今一度、青年が言っていた言葉を思い出す。
「今夜、迎えに行きます。ポロネーズからの伝言を伝えに。」
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