天使の降る街

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伝言…ポロネーズは一体何を伝えたかったのか? いや、それよりも気になるのは「迎えに行く」と言う言葉。 伝言を言うだけなら、あの場でも出来たはず。 (あぁ、でも、自殺に失敗して大泣きしてる時に、呑気に伝言なんて言える筈がありませんよね…) と、冷静になってみて初めてあの場の自分は何て、はしたなかったのだろう、と思う。 そして、自殺に失敗して良かった。とも思った。 愛する人の、きっと、最後であろう言葉を知る事が出来るのだから。 ポロネーズを失ってから、青色しか写さなくなった瞳で、彼の肖像画を見つめる。 今はもう、彼の金色の髪も、健康そうな肌の色も、全て青の濃淡でしか見えないけれど、それでも、愛しいあの人に変わりはない。 (貴方は、一体何を私に残して下さったの…?) 肖像画は何も語らない。 エリーゼが青色しか写さなくなる前と唯一同じの、碧く澄んだ瞳が優しく彼女を見つめ返していた。
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