逃避行

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「あの…それで、伝言っていうのは…?」 エリーゼが、おずおずと尋ねるとカノンは人差し指を口に当て 「それは此処では言えないな」 ニヤリと不適な笑いをする。 「では、一体何処でなら教えて下さるんですか?」 カノンは、スッと遠くを指さす。 「あそこ。」 「?」 エリーゼには遠すぎて、カノンが一体何処を差しているのかが解らなかった。 何となく、東の方角だという事は判った。 「じゃあ、行くか」 そう言って、エリーゼの手を取ったカノンの左手には、いつの間にかロープが握ぎられていた。 「…あの、もしかして、このロープで此処から降りるのですか?」 「そうだけど?」 他に何か方法があるのか?的な顔で返してくるカノン。エリーゼは、顔面蒼白だ。 「えっと…あの、普通に屋敷の中を通って行きませんか?」 と、もっともな事を言うとカノンは真剣な顔で 「何言ってんだ!屋敷の中なんか通ったら、監視が付いてくるだろ。それじゃ駄目なんだ! ほら!つべこべ言わず、俺にしっかり掴まれ!」 エリーゼをぐっと自分に引き寄せると、ロープをしっかり掴み、テラスから飛び降りた。 「きゃあぁぁぁぁッッッ!!」 エリーゼの絶叫が静かな街にこだました。
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