天使の降る街

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薄暗い部屋。 窓の外は穏やかな陽光が降り注いでいるのに、分厚いカーテンを閉めきっている所為でその光は入って来ない。 そんな憂鬱な部屋に居るのは、一人の少女。 ふわふわの金髪にエメラルド色の瞳。今、その瞳には何も写ってはいない。 ベッドの上に座り込み、その虚ろな瞳で虚空を見つめている。 「ポロネーズ…どうして私を独りにしたのですか…? どうして帰って来てくれないのですか?」 膝に顔を埋めて、去ってしまった人を想う。 (必ず帰って来るって、約束したのに…) すると、枯れてしまった筈の涙が零れて来た。 泣いても泣いても、涙は枯れない。愛する人も還っては来ない。 そんな事はエリーゼも解っている。それでも溢れる涙は止まらない。 (この世で逢えないのなら、いっそ…) 恐ろしい考えを胸に秘め、分厚いカーテンを開けた。
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