天使の降る街

5/10
前へ
/37ページ
次へ
「どうしよう…。完ッッッ全に迷った…!」 威勢良く屋敷に踏み込んで来たのはいいが、そこは貴族の屋敷。 だだっ広い敷地をウロウロしていたら、すぐに使用人に見つかり不審者として追いかけ回された上、その所為で迷子になって…と散々な目にあったのを思い出し、ガックリと肩を落とすカノン。 「俺って、そんなにも不審者に見えるか…?」 改めて自分の姿を見てみる。 髪の毛は元々クセが強いので、ボサボサなのは仕方ないとして、薄汚れている上に、長旅の所為で裾がボロボロになったマントを羽織っている。 「……うん。何処からどー見ても、不審者だ!」 などと妙に自信たっぷりに言っておいて、軽く落ち込む。 「はぁ…オヒメサマは何処に居るんだよ…」 「いたぞーっ!」 「ああっもうっ!ちょっとは休ませてくれー!!」 遠くから声がして、カノンは反射的に逃げる。 使用人以外にも、警備兵の姿も見える。ここで捕まると確実に牢獄行きだ。 闇雲に走り出したカノンをフッと影が包む。 不審に思い上を見上げると、そこには人影が。 金髪の髪、陶磁器のように白い肌、瞳は美しいエメラルド色。 そんな人影が自分目がけて降ってくる。 まるで天使だ……
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加