似てる二人は結局のところ赤の他人(後編)

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ん、やっと戻ってきたか。 「すみません。お待たせしました…ってあれ、神楽ちゃん、酢昆布食べきってなかったっけ?」 「マヨラーが買ってくれた~」 いや、目を点にするほどビックリすることかよ?まあ、確かに珍しいかもしれないがな… 「そうだったんですか。すみません、むしろ迷惑かけたみたいで。神楽ちゃんもお礼は言ったの?」 「ほうも、はりはほう。」 いや、口一杯に酢昆布入ってて、何言ってんのか分かんねえよ… 「どうも、ありがとう、って言ってます。」 不可思議な俺の顔を見て、気付いたらしい。このメガネ、うちの山崎よりやるな。 「ああ」 「じゃ、そろそろ帰りましょうか?…あ、その前に姉上のところに寄ってもいいですか?お米を分けてもらわないと…」 「ん、ああ。確か恒道館だったな」 「はい。ほら神楽ちゃん、行くよ。」 「お前に言われなくても分かってるヨ、このダメガネが。」 やっと酢昆布飲み込んだと思ったら、この罵詈雑言。やっぱ、似てくるんだな…メガネがなんか可哀想になってきた。 「言われなくても分かってるなら、キビキビ動く!!それに僕は地味ではあるけど、ダメガネじゃないからね!!」 「ジミーなの、認めやがったアル。しかも開き直った…」 「もう、行きましょう!!」 何かギャアギャア言いながら、俺たちはスーパーを出た。そこで声をかけられた。 「あら、新ちゃん?それに銀さんに神楽ちゃんも、どうしたの、そんなところから出てきて?」 そう、先ほど話に出てきた志村の姉、お妙だった。てか、そんなところってただのスーパーだろうが? 「姉上。いえ、今夕飯の買い物をしてたところだったんです。」 「へえ~、よくそんなお金があったわね?この甲斐性なしに。」 うわ~、万事屋…やっぱまともに働いた方が良いぞ。甲斐性なしとか言われてる…ん、志村姉が何かこっちに迫ってくるんだが… 「まさか、あなた。うちの新ちゃんにせびったんじゃないでしょうね?」 「いえ、違いますよ、姉上。実はこれには事情がありまして…かくかくしかじか」 メガネは志村姉に説明する。それにしても「かくかくしかじか」って便利だな。 「そういうことだったの…どうりで今日の銀さん、瞳孔が開いてると思った。副長さんだったのね。」 「ええ、それでお米を分けてもらおうと家に行く途中だったんです。」 「そう、良いわよ。うちにいらっしゃい。」 その時だった―― .
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