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得意気に遼子がテーブルの上に置いたのは──。
小さくて薄くて四角くて、吹けば飛んでしまうようなもの──。
「何これ?」
「見れば解るじゃん。名刺」
「それくらい解るわ!」
「誰の名刺だと思う?」
遼子がにやにやしながら、わたしの目をじーっと見つめる。
わたしはその名刺をとりあえず手にとった。
なんてことはないシンプルな白い紙。
横書きで会社名と、名前と電話番号が書いてある。
鞠村柊吾──まりむら……しゅうご?
俳優かっ!?
「誰?」
「ふっふっふ」
遼子が、さも楽しげに腕組みをして笑ってる。
「もったいぶるなっ」
わたしは思わず身を乗り出した。
だって、めちゃめちゃ気になるじゃない。
いきなりこんな名刺差し出されて。
「スーツ男だよ」
遼子が簡潔に言った。
「……」
「あれ? 反応薄いな」
鞠村柊吾……。
スーツ男の名前。
かっこよすぎる。
でも、彼にとても似合いの名前だと思った。
「……けどさ、なんでわたしに?」
「とぼけんな。気になってるでしょ?」
「はぁ!?」
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