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大卒で地元の消防署に、女性初の消防吏員として採用された、京極 若桜(きょうごく わかさ)は、今日も男達の意味ありげな視線をくぐり抜け、黙々と職務をこなしていた。
消学【消防官が通う学校】の頃から、十分理解していた。
消防は、男の仕事である、と。
それでも、消防監だった父の背中に憧れていた若桜には、消防士は幼い頃からの夢であり、実際にその職務についた今でも、情熱と真向きさは変わらない。
ただ、非常に辛い現実もある。
それは、平等に扱われる体力訓練や、男女間におけるセクハラ問題などではない。
消防は、男の職場。
それは揶揄ではなく、文字通り男しか存在しないということ。
つまり女が最初からいないのだから、トイレ、更衣室、風呂場、仮眠室等女性用の施設設備は、当然有りもしない。
それが、消防が男の職場であると言う事を、如実に現していた。
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