プロローグ

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「ねぇ、信行。どうしたの?」 身体にシーツだけをまとった藤代清美が、呆けて煙草を吹かしていた僕に尋ねた。 煙草を灰皿でもみ消して清美を優しく抱き締める。 数分前までの火照りが清美の身体に残っていた。 「仕事の事を考えてた」 我ながらぶっきらぼうな口の聞き方だったと思う。 その一言は清美の機嫌を損ねたみたいだ。 「会社で出した企画が、案は認められたけど通らなかったからさぁ」 僕は広告代理店『博通』に勤めている。 『博通』はS県立野市にある中堅の広告代理店だ。 広告代理店と聞くと、テレビCMとか華やかな世界を想像するけど、グループ内に印刷会社があるので、紙媒体を得意としている。 だからチラシとかパンフレットがメイン。
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