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午前中にしたミスは2つ。私にしては少ない方だ。注意されるのは、いつものこと。
正社員で働くことをあきらめた私が、派遣会社に紹介してもらった仕事は、通販会社のデータ入力。最初は電話オペレーターを勧められたが、人と話すのが苦手だと断ったら、紹介されたのがこの部署。
データーを入力していくだけの、誰にでもできる簡単な仕事だ。
そんな簡単な仕事もまともにできない自分に、落ち込むのもいつものこと。
休憩室のいつもの場所に、コンビニのお弁当を広げる。他の女性たちは、正社員と派遣社員でそれぞれグループを作って、お昼を食べている。
1人で食べているのは、私だけ。
別に1人が好きなわけではない。私は、学生の頃から女同士が作るグループに入れたことがないのだ。どうやったら入れてもらえるのか、見当もつかない。
無理に輪に入ろうとして拒まれて、傷ついたらきっと痛いから。
だったら、1人でいい。
そう思っている。
私のいないところでは、『暗い人』『変な人』と噂されていることも、なんとなく感じているけど。
だからって、どうすることもできない。
それが現実。
「こないだの外資との合コンどうだった?」
「サイアク!」
「マジー!?」
「女の子は、2000円ずつでいいよ、だって、ありえなくない!?」
「うわ、なにそれ!」
「いい男って、なかなかいないもんだねえ」
「ねえ、普通の人でいいのにねえ」
派遣グループの会話が遠くに聞こえる。耳をふさぎたい気分で、持ってきた雑誌に目を落とす。
休憩室には、誰かが持ってきた雑誌が雑然と置かれていて、勝手に読んでいい暗黙のルールがあった。
今日何気なく持ってきたそれは、日本一の刊行数を誇る女性用ファッション雑誌。
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