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ただいつもと違うのは,その顔に浮かんでいるのは笑みではないという事。
じっと睨み付けるような鋭さに,さすがの男もたじろいだ様子を見せる。
「な,なんだ和良地。教師にそんな目を向けていいと思っているのか!」
怯みながらも強い調子で言う目の前の男。
だけど,先輩には全くと言っていい程変化はない。
「その教師が生徒虐めていいんですか?そんなんじゃあ皆,あなたを教師とは見てくれませんよ。」
「くっ…!」
「分かったらさっさと失せてください。もう服装チェックは終わったでしょう?」
「!!」
先輩の"正論"に何も言えなくなったのか,悔しそうに歯噛みするといつの間にか集まっていた生徒の中に紛れるように去って行った。
「喧嘩売る相手考えろ,下衆が。」
「え?」
「いや,何でもねぇよ。」
聞こえた声に振り向くと,そこにはいつもの無邪気な笑み。
思わずほっとした。
さっきの目は見慣れた先輩の"目"と違っていたから。
(先輩を恐いと感じるなんて…。)
私は自分でも気付かないうちに,先輩に対して恐怖を感じていたらしい。
「…大丈夫,か?」
「え?」
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