―心は曇りのち晴れ―

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だけど,階段を上り終わった所で重厚な扉を開ける音を聞いて何処に向かおうとしているか,分かった。 屋上だ。 そう思った瞬間,さぁっと頬を撫でる優しい風。 思わず顔を上げると,目の前に広がるのはどこまでも青い空。 吸い込まれそうな程の澄んだ色にほぅっと息を吐いた。 「…落ち着いたか?」 「はい。」 さっきまであんなに胸の中にぐちゃぐちゃとした物が溜まっていたのに,すんなりとその言葉に返事できる自分に驚いた。 でも,この大空の前ではどんな事も凄くちっぽけな事だなぁと思ったら,うじうじと悩んでた自分がバカみたいだと思った。 なんだかとっても心が和む。 「…なぁ。」 突然聞こえた心地好い音。 でも少し硬い気がする。 らしくない,なんて考えられる自分に再びビックリ。 「何ですか?」 「さっきの,さ。マジ?」 「さっきのって?」 「…オレの事好きっての。」 「……。」 ドキン,と心臓が跳ねた。 バクバクと煩い。 でも,さっきと違って気分が清々しいからかもう否定する気にはならなかった。 だからだと思う。 素直にハイ,と頷いたのは。 「マジで?」 .
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