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一ヶ月前の実力テストでは、一応トップになった。
松蔭高校ではテストの度に順位を発表するシステムになっているが、壁に生徒の名前を掲載するのではなく、各自に結果を用紙で渡されるのだ。
担任から受け取った用紙を開いて、彰文は冷めた目で結果を見た。
一学年、三百八十三人の中で彰文は一位であった。
無言のまま、結果票を見ている彰文を見て、担任は表情を曇らせながら一言、告げた。
「嬉しくないのか?」
「いいえ。トップを取るために生きているので。」
「・・・二位は同じクラスの春日和臣【カスガカズオミ】だ。春日は悔しがってたぞ?」
「・・・失礼します。」
誰が、何を言おうが関係ない。
トップの成績を取る。
これが、彰文の義務だ。
ボウッと空を眺めていると、フッと何かが翳った。
そこには、きょとんとした表情の男子生徒が立っていた。
ジーッと彰文を見て、一言。
彼は告げた。
その言葉の意味に、彰文は戸惑いを隠せなかった。
「確か、同じクラスの有馬だよな?何でここにいるの?」
「関係ないだろ?で?何の用だ?」
周囲を拒絶する態度で彰文は無愛想に返答をした途端、男子生徒の眉間の皺が寄り、口が開いた。
「用がなくちゃ、話しかけちゃいけねえのかよ!てめえはどこぞのお坊ちゃまかよ!」
「・・・。」
「俺は春日だ。有馬、お前に用があるからな話しかけたんだ。文句あるのかよ!」
「・・・・・。」
和臣の勢いに、彰文は戸惑ってしまった。
そんな彰文を見て、怒っていた和臣はきょとんとした表情に変わると、ケラケラと笑い始めたのである。
「何だよ。そういう間抜け面も出来るんだ。ハハハハ!」
意味が解らない。
どうしたらいいのか困っていると、和臣は笑顔で手を差し出した。
「よろしくな。俺たち、友達になろうぜ。」
「友達?」
「ああ。だって、面白そうだからな。お前」
「・・・・。」
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