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それが和臣との出会いだった。
和臣とは会話をするものの、今まで一人で過ごしてきた彰文にとっては色々と抵抗を感じるものがある
その度に和臣が怒ったり、注意をしては少しずつ直していく。
彼のお節介のおかげか、夏休みが空けると彰文は普通にクラスメイトと話せるようになっていた。
(これって・・春日のおかげ?)
戸惑いながらも毎日を過ごして行く彰文だったが、何かしらの影響は生じるのだろうか。
学年トップの成績が、少しずつ下降していくのである。
それでも和臣とトップ争いをしているぐらいの成績なのだから、周囲からすれば差ほど気になる問題ではないのだが、富美江にとっては大問題だった。
帰宅すると、真っ先に出迎えてくれるのは富美江のヒスだった。
一学期末のテストで、彰文は二位になってしまったのだ。
たまたま予想していたヤマが外れてしまったための、痛恨のミスだ。
塾でも習った場所だが、講師が余り重要にしなかったのもあり、見過ごしていたのかもしれない。
和臣もヤマを外したが、得意の科目で点数を稼いだので、一位になったのだ。
今回の順位に対して、彰文はそんなに悔しいとは思っていない。
むしろ、得意分野が少ない自分にイラッとしていた。
それなのに、富美江は二位という順位だけで怒りを露にした。
「どうして一位じゃないのよ!」
ヒスを起こしている富美江を見て、彰文は無視をして自分の部屋に戻ろうとしたが、腕を掴まれた途端、平手打ちを受けてその場にしゃがみ込んだ。
「親を無視するなんて!お母さんはそんな風に育てた覚えはないわよ!何て最低な子供!あなたの将来を思ってお母さんが心を鬼にしているのに!」
決まり文句も聞き飽きる。
鈍い痛みがジワッと頬に広がる。
彰文はその場に動けずにいた。
叩けば何でも言うことを聞く動物でもなければ、人形でもない。
富美江がヒスを起こしていると、必ず彰雄が間に入って富美江を制止する。
だが、富美江がこうなったのは彰雄にも一因があるのだ。
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