何のため?

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 こうして、彰文は念願の生徒会長になり、和臣が副会長になった。  同じ副会長には隣のクラスの甘粕麻衣【アマカスマイ】。  書記には双子の兄妹で有名な須藤理人【スドウリヒト】と理香【リカ】。  会計には二村佳枝【ニムラカエ】と和田町透【ワダマチトオル】に決定した。  和臣以外のメンバーとはクラスが一緒になったことがないので、初めて見る顔だ。  だが、佳枝と和臣と彰文以外のメンバーは同じ中学校の出身者らしく、初対面の態度ではなかった。  こうして、新生徒会が発足したのだが、問題点が多かった。  それは、彰文だ。  富美江には生徒会長になったことを伝えたのだが、前々から『生徒会長になれば内申書にプラスになる!』と豪語していたはずが一変。  突如として怒り出したのである。  理由は、彰文の成績が絡んでおり、富美江は『生徒会長なんてやっていたら、成績が落ちる一方よ!』と頭ごなしに怒鳴ったのである。 (言っていることと違っているじゃないか!)  これにはさすがの彰文も怒りを抑えることが出来ず、怒ったのだが無駄に終わった。  念願の生徒会長も、成績に影響するからと塾を優先させるように指示をされ、苦悩した。  和臣には申し訳ないが、操り人形は操ってくれる人がいなければ動けないし、従わなければならない。  こうして彰文は生徒会にはほとんど関与せず、勉強漬の日々を送っていた。  不幸中の幸いだったのが、生徒会メンバーと見事にクラスが別れたこと。  顔を合わせれば生徒会のことを追求されると思い、彰文は恐れていた。  だが、それは考えが甘かったようだ。  和臣が一週間に一回、教室を訪ねては彰文を無理矢理生徒会室に引っ張っていくのだ。 「お前が生徒会長なんだから、しっかりしやがれ!」  まるで、登校拒否をしている子供を、親が無理矢理連れて行こうとしている光景と一緒だ。  周囲は笑い、彰文は複雑な心境だったが、和臣は違っていた。  確実に怒っているのである。
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