怪力と眼鏡

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どうやら、勇司が躓いた物は先程の箪笥のカケラだったようだ。 ……引き出し部分だったみたいだが、勇司はこれに気づけなかったのだ。 (……いったん、止めさせよう) 原因だけでもわからないかと、勇司の様子を見て分析していた大和は手で頭を押さえた。 (これは、勇司がドジなせいだな。怪力であるせいで被害が倍増している) 普通の人ならば、本人が怪我をするはずなのだが、勇司の場合は物が先に壊れる。 つまりは、勇司の咄嗟の怪力や不注意等を治さないといけないわけだ。 (前途多難、だな) 大和は未だにテーブルに挟まれたままの勇司に近寄る。 勇司の怪力ならば、テーブルを直ぐにでも退かすかと思ったが、ピクリとも動かない。 「……勇司?」 恐る恐る声をかける。 返事がない。 勇司から何か音がしたので大和は耳を澄ました。 すするような音と、しゃくり上げるような勇司の声。 ……テーブルに挟まれたまま、泣いているようだ。 大和は勇司の上にある壊れたテーブルを退かそうとするが、完全には持ち上がらなかったようで、横にずらして置いた。 勇司の顔を覗き込むと、子供のように泣きじゃくっていた。
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