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顔を歪ませて泣いている勇司に大和は恐る恐る声をかけた。
「……そんなに痛かったのか?」
「ヒッ……ち、違い……ますぅ……グス」
泣きながら顔を横に振り、否定した。
痛くて泣いている訳ではないようだ。
「じゃあ、どうした?」
大和はしゃがみ、勇司の頭を優しく撫でた。
(……怪我はないな)
大和は撫でながら、怪我がないかをチェックした。
コブにはなっているかと思われたが、傷一つない。
(……頑丈だな)
妙なところで感心していた大和だったが、泣いている勇司を泣きやます為に声をかけ続ける。
「泣いているだけじゃわからない。どうしたんだ?」
「ぅう……じ、自分が情けなくて」
大和に撫でられていたからか、勇司は少し落ち着いたようだ。
涙を拭いながら、ぽつりぽつりと話し始める。
「……俺はお嬢に会う為に、お嬢に仕える為に来たのに……何も出来なくて」
そう言うと勇司はまた、顔を歪める。
まるで、子供のようだ。
「勇司は涼次郎<リョウジロウ>様の紹介で来たんだったな。……あまり落ち込むな。誰にだって失敗はある。これからどうやっていくかが重要だ」
大和はそう言って頭を撫でながら慰める。
大和の言う涼次郎は、朔夜の祖父であり、勇司を紹介した人物だ。
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