怪力と眼鏡

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勇司は自分の掌を見て、握ったり開いたりを繰り返す。 大和はそんな勇司の頭を軽く小突いた。 「……イタ、な、なんですか?」 「話を続けるぞ。そこでだ……お前、ここにある家具を全部朔夜様だと思え」 大和と指を指しながら、勇司にそう言った。 言われた勇司は、意味がわからずにポカーンと口を開けて、大和を見た。 「……えと、意味がわからないのですけど?」 勇司は困惑したまま、思わず聞き返す。 そんな勇司の様子に目もくれず、大和は先程勇司が転ぶ原因となった木片を手に取った。 「お前は、朔夜様に仕える為に来たのだろう?だったら、壊してしまいそうな物全てを朔夜様と同じだと思えば、不要に壊してしまう事がなくなるのではないかと思う」 「……暗示、みたいな感じですか?」 「そういう事だな。あとは、一人で頑張れ」 大和は勇司の肩をぽんと叩き、木片を持ったまま部屋を出ようとする。 「え、見守っていてくれないんですか!?」 「そろそろ戻らないと、朔夜様に叱られてしまうからな。お前の事は話しておくから心配するな」 「あ、ありがとうございます……じゃなくて!もっと具体的な何かないんですか!?」 「ない」 きっぱりと、切り捨てるかのように大和は言う。
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