3人が本棚に入れています
本棚に追加
勇司は自分の掌を見て、握ったり開いたりを繰り返す。
大和はそんな勇司の頭を軽く小突いた。
「……イタ、な、なんですか?」
「話を続けるぞ。そこでだ……お前、ここにある家具を全部朔夜様だと思え」
大和と指を指しながら、勇司にそう言った。
言われた勇司は、意味がわからずにポカーンと口を開けて、大和を見た。
「……えと、意味がわからないのですけど?」
勇司は困惑したまま、思わず聞き返す。
そんな勇司の様子に目もくれず、大和は先程勇司が転ぶ原因となった木片を手に取った。
「お前は、朔夜様に仕える為に来たのだろう?だったら、壊してしまいそうな物全てを朔夜様と同じだと思えば、不要に壊してしまう事がなくなるのではないかと思う」
「……暗示、みたいな感じですか?」
「そういう事だな。あとは、一人で頑張れ」
大和は勇司の肩をぽんと叩き、木片を持ったまま部屋を出ようとする。
「え、見守っていてくれないんですか!?」
「そろそろ戻らないと、朔夜様に叱られてしまうからな。お前の事は話しておくから心配するな」
「あ、ありがとうございます……じゃなくて!もっと具体的な何かないんですか!?」
「ない」
きっぱりと、切り捨てるかのように大和は言う。
最初のコメントを投稿しよう!