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ある街に名家と名高い霞家があった。
霞家の屋敷は街を見下ろせる丘の上にあり、街の住人は誰もが知っていた。
森一つが入る程の広い土地に、大きな屋敷。
そね屋敷には霞家の長女……霞 朔夜<カスミ サクヤ>と数人の使用人だけが暮らしていた。
朔夜の両親は海外での仕事があり、滅多に帰ってこないのだ。
彼女の祖父母は存命だが、違う土地で暮らしている。
朔夜はそんな暮らしにいつしか慣れていた。
「あんのダメダメ執事!どこに逃げやがったのよ!!」
……慣れてはいたのだが、今日も彼女は怒りの形相で廊下を歩いていた。
黒のワンピースを翻し、ヒールが高めの靴を履いているのも気にせずに、彼女は足を乱暴に動かしていた。
ウェーブのかかった紫が混じった黒髪を振り乱し、元々つり目なのだが、更につらせた髪と同じ瞳で辺りを見回す。
なぜ彼女がお怒りなのかというと、学校から帰宅し、部屋に入ると半壊していたからだ。
彼女のお気に入りのテーブルも硝子でできた人形も破壊されていた。
レースがたっぷりの天蓋付きのベットも目茶苦茶で、クローゼットも倒れていた。
(……たく、何をしたらああなるのかしらね!?)
苛々としながら、朔夜は髪を掻きむしる。
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