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(……俺が行かない方がお嬢は怒らないだろうなぁ)
そう考えると、大和が一人で出て行ったのは正解だろう。
勇司がいれば、朔夜に油を注ぐ行為になる可能性が高い。
勇司は落ち込みながら、部屋に戻る。
とりあえず、大和の言っていた事を試すようだ。
壊してしまったテーブルを片付け、木の椅子に手をかける。
「これはお嬢……これはお嬢……これはお嬢……」
椅子に向かってぶつぶつと呟く勇司はとてつもなく、不気味であった。
だが、本人としては真面目にしていたのである。
暗示のように呟く事に集中していたせいか、持つ手に力が入り、掴んだ部分が軋み、無惨にも粉々になる。
「あぁ!お嬢、申し訳ありません!?」
椅子に向かって土下座をしながら謝る勇司。
端から見ると、一人漫才をしているようにしか感じられない。
「……ぅう、本当のお嬢にはこんな風にはしないのに」
椅子に愚痴を零すかのように一人言を言う勇司は、どことなく涙目であった。
彼が自分の力を制御出来る日は来るのだろうか?
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
……暫くは無理かもしれない。
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