怪力と眼鏡

14/14
前へ
/24ページ
次へ
(……俺が行かない方がお嬢は怒らないだろうなぁ) そう考えると、大和が一人で出て行ったのは正解だろう。 勇司がいれば、朔夜に油を注ぐ行為になる可能性が高い。 勇司は落ち込みながら、部屋に戻る。 とりあえず、大和の言っていた事を試すようだ。 壊してしまったテーブルを片付け、木の椅子に手をかける。 「これはお嬢……これはお嬢……これはお嬢……」 椅子に向かってぶつぶつと呟く勇司はとてつもなく、不気味であった。 だが、本人としては真面目にしていたのである。 暗示のように呟く事に集中していたせいか、持つ手に力が入り、掴んだ部分が軋み、無惨にも粉々になる。 「あぁ!お嬢、申し訳ありません!?」 椅子に向かって土下座をしながら謝る勇司。 端から見ると、一人漫才をしているようにしか感じられない。 「……ぅう、本当のお嬢にはこんな風にはしないのに」 椅子に愚痴を零すかのように一人言を言う勇司は、どことなく涙目であった。 彼が自分の力を制御出来る日は来るのだろうか? 「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」 ……暫くは無理かもしれない。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加