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朔夜は一部屋ずつ開け、中を確認していく。
「朔夜お嬢様、どうかなさったのですか?」
部屋に入らず、中だけを見ている朔夜に女性が話しかける。
薄い茶色の髪を肩の上に揃え、カチューシャをさし、メイド服を着た女性が朔夜にふんわりと笑いかける。
彼女は、望月 理奈<モチツキ リナ>。
霞家に仕えるメイドである。
「……理奈。あのダメダメ男知らない?」
理奈は、呆れたように青い瞳を伏せた。
「勇司さんたら、またしちゃったんですか?」
「えぇ、またよ!腹立つわぁ!」
「お嬢様、落ち着いて下さいな」
理奈は朔夜を宥めようとするが、朔夜の怒りは治まらない。
勇司というのは、この屋敷に来たばかりの執事、上原 勇司<ウエハラ ユウジ>の事だ。
朔夜の祖父の紹介でやってきたのだ。
彼は意欲はあるのだが、なぜか空回りというか……掃除をすると、必ず何かを壊してしまう。
唯一、失敗しないのは料理ぐらいなものだが、皿を割ったりしてしまう。
「あいつ、どこ行ったのよ!?」
「勇司さんの性格を考えると、壊したものを片付けようとしているんじゃないでしょうか?」
「……それって、更に破壊されていくって事よね?あぁもう、面倒臭い奴ね!」
慌てて朔夜は来た道を戻って、自室へと向かう。
理奈もその後を早歩き追った。
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