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朔夜は無言のまま、勇司へと近づいていく。
「……お、お嬢?」
朔夜のただならぬ様子に、勇司は今更ながら自分の失態に気づいたようで青ざめた。
近づいた朔夜は右手を出し、
「……箒」
と言った。
どうやら、勇司の持つ箒を渡せという事らしい。
「……へ?」
「……いいから、渡しなさい」
一瞬、勇司は言っている意味がわからなかったが、淡々とした口調で言う朔夜に嫌な予感がしながらも箒を手渡した。
箒を受け取った朔夜は、箒の下の方を持ち、勢いよく振り上げた。
「がふっ!?」
「お、お嬢様!?」
朔夜が振り上げた箒の柄の部分が勇司の顎に直撃した。
不意の衝撃に、勇司はよろけて尻餅をつく。
そんな勇司をぎろりと見下ろす朔夜は鬼のようだった。
「お、お嬢……す、すいませんでしたぁ!!」
勇司は慌てて土下座をして許しを得ようとする。
「……そんなんで、許してもらえるとでも?」
が、朔夜の怒りは収まらなかった。
「いたっ!お、お嬢……いたた!」
朔夜は箒で勇司の背中を叩きまくった。
無言でひたすら叩きつける彼女は、理奈が止めるまで続いたという……。
勇司がこの屋敷に来てから、これが彼女達の日常となっているのでした。
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