大事な宝物

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そんな時、司さんが身動ぎをして手が無意識にベッドを彷徨いだした。 薄ら目を開いた後、急に“ガバッ”と起きて周りを見回すと私を見つけた。 その後、盛大に肩から息を吐き出して安堵した表情を見せた。 私は少し身体を堅くしてその一部始終を見ていた。 「…何処にまた行ったかと思った…また…消えてしまったかと思った」 頼りない言葉に胸が締め付けられ、フラフラと近付くと両手で司さんを包み込んだ。 「…もう…何処にも行きません。ずっと司さんの側に居ますよ」 諭しながら背中を撫でてやると、司さんは私の首に顔を埋めて抱き締め返してきた。 「勝手に居なくなるな。…勿論、宣言してから居なくなるのも無し」 そう言われていつか行った温泉旅行の事を思い出した。 少し笑いながら『はい』と返事をすると更に“ギュッ”と抱き締められた。 .
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