いつか、その手を掴む時

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  蛍光灯に向かって青白い煙りがゆっくりと不規則に立ち上ぼる。 うねうねと絡まる様に、速度を変え解ける様にそれは動きいつの間にか消える。 寝そべった私はその煙りをただジッと眺めていた。 左手の指に挟んだマイルドセブンは、ずっと私のお気に入り。 『何それ?オヤジみたい。』 そう言って笑う女友達の指には細くて長い煙草が挟まれていた。 テーブルには、ブランド物のシガーケースとケースの下からは100円ライターがはみ出していた。 『興味ないから…そんな煙草。』 そう言って、自分の手を口元に寄せると深く煙を吸い込み、わざと大きく吐き出しては、男みたいに振る舞って見せた。 (こんな日はお酒でも飲めたらいいのに…。) 全くの下戸な私は、ゆっくりと辛くなった煙草の煙りを吐き出しながら思う。 小さく震える指でフィルター近くまで短くなった煙草を灰皿でグリグリと揉み消した。 束ねていた髪を解き、ぐしゃぐしゃと乱雑に髪を掻き混ぜるとゆっくり立ち上がりそのまま風呂場へと移動した。 人が居なくなった空の部屋には薄らと残る青白い煙が横に何本もの細い線を引いていた。 まるで、ほんのり苦い顔をした私とその未練を映す様に…。
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