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群がる敵を切り伏せる。
その剣は鮮血に濡れ、その足は止まる事を知らない。
血飛沫に濡れたその鎧兜の下にある顔は見えず、それ故そこに映る感情もわからない。
その動きは、ただ機械的に目前の敵を切っていくよう。
その者の後ろには、累々と屍が築き上げられていた。
後ろから、風を切る音がした。
振り向きざまに剣を放つ。
鋭い金属音が空に響いた。
「…っ!」
見れば、そこにはローブ姿の男が立っていた。
「初撃で仕留めるつもりだったんだけどな…」
小さく舌打ちをしながらその男は続けて言う。
「悪いが、我が軍の兵を殺すのはそこら辺でやめてもらえないか?こう簡単に数を減らされたらこちらも堪えるんだけどな」
その言葉に、血に濡れた騎士は答えず、代わりに剣の切っ先を向けて返答する。
「やっぱり無理…ま、当然か…」
残念そうに呟いた後、ローブの男は短剣を構え、呼吸を整える。
次の瞬間。
一気に間合いを詰め、剣撃を放った。
無言で応酬する騎士。
その剣筋は踊っているように滑らかで、息もつかせぬ連続の剣撃を事もなげにいなす。
「…フッ!」
騎士が息を短く吐き、剣を持つその両の手に力を込めた。
短剣は簡単に弾かれ、長剣が胴体を両断しようと脇腹へ迫る。
「ぬ…!」
剣が止まる。
ローブの男は右手に弾かれた剣と同じ短剣をいつの間にか左手にも握り、それを脇腹に当てて、騎士の刃を止めていた。
「二刀流か…」
忌々しげに騎士は呟き、一度距離を置く。
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