674人が本棚に入れています
本棚に追加
優越感にドップリ浸った、なんとも憎たらしい笑顔を浮かべて「バイビー」と巧は去っていった。
両手にぶら下がった買い物袋がズシリと重味を増した。
夕陽が馬鹿に眩しく映り込む。いや、もう馬鹿だ。どうなっているんだ。なんで橙色して光っているんだ。
と、自然現象にも八つ当たりをする程に、俺の心は相当参ってしまっていた。
だらだらと力無く道を歩き、マンションに着く。二階への階段を昇ることすらかったるく思えて、エレベーターを使った。
すれ違った爺さんが、今の若者と来たら、と言わんばかりに溜め息をついたのが、また腹が立った。
二階でエレベーターを降り、我が家となった012の部屋番号を確認して玄関を開けた。
電気を付けないで、荷物から低反発の枕だけ取り出して、すぐに布団に横になった。
「ちくしょおぉぉぉ!!」
隣近所に響かないように、布団に潜り込み枕に顔を埋めて思いの丈を叫んだ。
あんな長身でだらしないボサボサ頭の靴下履かない男に先を越されるなんて……。
想定外、の一言に尽きる。
あの巧に彼女がいて、俺にはいない。この劣等感。あぁ、いっそプライドという概念が無くなれば良い。
今日はもう、立ち上がる気力も湧かず、そのまま眠りに落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!