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眠りに落ちた、と言うのには些か語弊があった。
ちょうど現実と夢の世界の間をさ迷っているかのような、中途半端で、気持ち悪い状態。
先程までは、爽やかな春の風を感じていたのに、何故か熱帯夜を過ごしているかのように悶々と暑い。
これも巧のせいなのか。いや、枕が悪いんだ。低反発とか言って無駄に固いだけじゃないか。試しに頭に置いてみるべきだった。
暑さのあまり、布団を捲ろうとするも、体が動かない。
俺は幽霊などのオカルト的現象は信じていない。それはあまりに非現実で、人間の生み出した空想の産物に過ぎないと考えている。
とは言っても、もし自分がその系統の体験をすれば、一気にオカルト信者へと成り下がるだろう。
ここに、金縛りという体験が俺を襲った。体が全く動かない。動かす意志は絶対にあると保証できる。
体の上に何かが乗っているような感覚。確実に“何か”いる。
初めてのオカルト的体験に、ちょっとした期待を込めて瞑っていた目を開けた。
「……」
人の頭が、そこにはあった。
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