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「なら問題はあなたにあるのよ、自分を真摯な心で見つめて、よく考える事ね。」
「し、真摯な心……。」
……自分も魔王であるのに、よくもまぁそんな難しい事を言ってくれる。
クロウは内心つぶやきながら、過去の自分を振り返る。
「……辛い事など。」
忘れてしまった、何故なら喜びや楽しさの方が圧倒的にあるからだ。
「あの退屈な魔界での生活を見れば……。」
火を見るより明らかだ。
毎回毎回、自分の称号を手に入れるためだけに訪れる魔王達を、次々に狩りとっていくのみの生活。
たった一人の城で、無限に思える長い時間を過ごしてきたクロウにとって、やはり、アリスはかけがえのない者。
それを疎ましいなどと、どうして、誰が思えよう。
「………アリス。」
珍しく目を伏せながら、クロウは窓から景色を眺めてみるのだった。
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