第二章 出会い

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そして、踵を返し、倒れた二輪車を起こす。何度か動作を確認したのちに良い足が出来たと走り去った。 車体の高い車の助手席からその様子を双眼鏡で覗いていた者がいた。 長い黒髪を一つに纏めている少女は、目を離す。 歳にして十代後半に見える。 綺麗な碧眼と整った顔立ちをしているが、今は凶悪な仏頂顔で砂埃を上げながら近寄ってくる二輪車を眺めていた。 小太りの男は、鼻と口で激しく呼吸を繰り返していた。 車の前で急停車をして 「話しが違うじゃねえか!あんなに強いなんて聞いてないぞ!」 少女はフロントガラス越しに微笑み、助手席の窓を開き 「あんた達がそんなに弱いなんて知らなかったのよ。ごめんね?」 全く詫びる気持ちがない返答に、運転席に座る初老の男性は、やれやれ、と首を振る。 オールバック気味の髪に、スーツで身を包み気品を漂わせてはいるが、隠しきれてない殺意が小太りを怯ませる。 「お嬢様、どうしますか?」 威圧的な視線を投げかけながら、これといった感情もなく初老の男性は言った。 手には、銃が握られている。 どうするかとは、始末するかどうかという意味だろう。 少女は、綺麗な碧眼を男に向ける。 「まあ、この程度なら役に立たないし、報酬だけ渡しましょう」 少女は懐から小袋を取り出し 「よろしく、ウォーリー」 ウォーリーと呼ばれた男性は、了承して車を降りる。 ひっ、と短い悲鳴をあげた小太りの掌に小袋が渡される。 「中に今回の報酬が入っています。お嬢様の気持ちです」 警戒をしながら、恐る恐る小袋の中身を確認し、口元が緩んだ。 「まあ、これで妥協してやるか。有り難く思えよ」 打って変わった態度に、ウォーリーはつい素で呆れてしまい、どうでも良さそうに目を閉じた。 「それでは、失礼します」 「……待てよ」 「何でしょう?」 小太りは、小袋の口を広げて 「こっちは仲間までやられたんだぜ?これっぽっちじゃ申し訳がたたねえと思わねえのか?」 「いえ、妥当な金額ですよ。結果として彼を捕らえていませんしね」 では、と車の扉に手をかけた。 そこで、一発の銃弾がウォーリーの足元で弾けた。 硝煙を上げている銃を握った小太りの嫌な笑みは変わっていない。 しかし、余裕のある表情を崩さない少女は、ウォーリーに小さく目配せした。 「だから、止めておけと申したんですよ」
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