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「どこまで着いてくる気だよ……」
呆れ気味のジークに対し、ルイスは、激しく息を切らせていた。
出てくる言葉は弱音ばかりで、もう駄目だ、と立ち止まる。
終始見上げていた首は筋肉が固まったかのように、激しく痛んでいた。
ほんの少しの休憩を挟み、再びジークを追う為に見上げたが、既にどこかへと行方を眩ませていた。
「……くそ」
短い悪態をつき、ルイスは帰ろうと踵を返したが
「ここ、どこだ?」
無我夢中に追走していたので方向感がなくなっていた。
地図を出そうにも、ボーイに預けていた事を思い出して断念する。
「ちくしょう!」
**** ****
「振り切ったか」
影が見えなくなってからも、逃走を続けたジークは、街を半周して居住区に入っていた。
舗装された地面に足を下ろす。
居住区の外れに位置する場所のようで、辺りに人影がなく安心して座り込んだ。
「一体、誰だったんだ?俺に着いて来れるなんて、人間には無理なはずなんだがな……」
思考を回し、ルイスの正体を考えていたが、結局はわからなかった。
立ち上がり、もう一度だけ周囲を確認し、出来るだけ人混みに紛れた方が見つかりにくいだろうと思案する。
表道りに行になるが、構ってはいられなかった。
そして、通りに出た瞬間に、髪を束ねた少女とぶつかった。
「もう、気をつけなさいよ!」
「ああ、悪いな。大丈夫か?」
少女に右手を差し出し、握り返すのを待ってからジークは、ひょい、と呆気なく立たせた。
「次はないからね!分かって……」
少女は、ジークの顔を覗き込むように膝を曲げて数秒後、叫んだ。
「デルフォール・ジーク!」
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