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ジークは、急な事態に狼狽してしまう。なぜこんな少女が、賞金首である自分を知っているのか。少女はジークを指差し
「ウォーリー!見つけた!」
着いていく事が出来ない周囲の一般人でも分かる程の殺気を漂わせ、初老の男が人混みから少女の背後に現れた。
「リンスお嬢様、あまり大声で喚き散らさないで下さい。はしたないです」
そう言って、リンスがごめん、としおらしく謝罪すると同時に、ウォーリーの鋭い双眸がジークに投げられる。思わず身構えたジークに、ウォーリーは口を開く。
「懸賞金一億五千万のデルフォール・ジークとお見受けします」
「子連れとは珍しいバウンティ・ハンターだな」
「こちらは、私の主であるリンスお嬢様です」
リンスは、ふん、と小さく鼻を鳴らすとジークを指差す。
「デルフォール・ジーク!あなた、今日から私に就きなさい!」
「賞金首である俺を雇うのか?」
「大丈夫よ!心配ないわ!」
どこから湧き出てくるのか聞きたくなる程の自信で言い切った。そのリンスに、ジークは溜め息だけを返す。
「断わる。話しは終わりだな」
ジークが踵を返すと、賞金首と認知された為か周囲の歩行者達は波のように道を開けた。歩み出そうとしたジークの背中に
「そういう訳には、いかないのよジーク」
リンスの一声で、ウォーリーが一歩だけ前に出た。振り返らずにジークが言う。
「止めておけ。ここじゃ死人が出るぞ」
「そうですね。なので、被害が出ない場所へ移動しましょう」
「……どうなっても知らないからな」
二人は、同時に飛び上がり、屋根に着地した。一軒分の間を空けて対峙する二人を見て、残る者と逃げ出す者に別れていく。頃合いを見計り
「始めてよろしいですか?」
「なんだよ。待っててくれたのか」
ジークは剣を抜き、ウォーリーは銃を構える。
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