157人が本棚に入れています
本棚に追加
薄れる意識の中、兵士は、確かにジークの顔を記憶した。
幼い顔付きに似合う金髪とその蒼い双眸、そして、その深く根付いているような憎しみを忘れられずに、目を閉じた。
その様子すらも確認せずに、ジークは剣の柄を掴み、引き抜くとその場に捨てる。と、同時に王宮内にいた兵士の倍以上の法皇親衛隊が雪崩込んできた。
先頭にいる三人は、現状を目にした途端に思わず口を抑えた。
「天下の法皇親衛隊『ケルベロス』がお揃いで……むさ苦しい事だ」
先頭に立つ三人を示して言ったジークに、中央にいたスキンヘッドが答える。
「デルフォール・ジーク……お前がやったのか?」
「堅苦しいな、今までジークと呼んでただろ?」
「貴様と馴れ合うつもりはない。投降しろ、勝ち目はないぞ」
「確かに……『ケルベロス』三人は分が悪いが、そう易々と捕まる訳もないだろ?」
ジークは、捨てたばかりの剣を拾い上げ、戦闘態勢をとった。
その様子を無言で眺めていたスキンヘッドは、仕方ない、と呟き、懐から拳銃を取り出した。
距離を考えれば、ベストな判断だろう。
「非常に残念でならない。お前なら、奴隷階級から抜け出せる力も備わっているのだがな」
「こっちは嬉しいぜ?今頃は、奴隷階級だった全員が逃げているだろうからな」
ギリ、と歯を噛み締めたスキンヘッドは忌々しそうにジークを睨みつける。
「後々、ゆるりと捕まえるさ」
「嘘は体に悪いよ」
安い挑発だった。しかし、スキンヘッドは怒りのあまりに引き金をひいた。
撃ち出された弾丸は直線上に飛んでくる事を見込み、持ち前の反射神経で外し、柱に身を隠す。
「さて、どうするか……」
唯一の入り口には、少なくとも三十人の武装兵士がいるので強行突破は不可能。完全な手詰まりだった。
最初のコメントを投稿しよう!