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「貴様に十秒やる。それまでに出てこい!」
スキンヘッドの叫び声を、敢えて無視したジークは、玉座を盾にして一度顔を覗かせた。そして、すぐに戻す。
「強行突破は無理だな……どうするか……」
思考を巡らすが、良い案は浮かばず、カウントが始まる。刻々と告げらられていき、五秒と一際大きく言われた時点で、覚悟を決めた。
なるようになれ、と玉座に手をかけたが、突然に地面が空いた。
「嘘だろ!」
重力に従い、ジークは暗い穴を落ちていき、カウントを終えたスキンヘッドは、一斉射撃を命じる。
雨のような弾丸が、玉座を半分程までに穿っていたが、ジークの姿は無かった。
「どういう事だ?」
眉を顰めて、隣にいた兵士に顎で探れと指示を送る。
銃を構え、油断なく近づいた兵士は
「隊長!」
「どうした?」
「玉座の裏に……」
隊員を押しのけ、スキンヘッドはジークが落ちた穴を冷静に判断した。
「話しには、聞いていたが、こんな所にあったのか」
それは、王族逃走路だった。戦争などで逃げる際に使用する逃走路は、縦に深く掘られており、どこまでも続いていそうな闇が広がっていた。
「すぐに奴を探しだせ!」
寸分の狂いなく敬礼を返した隊員達は、迅速な動きで散っていく。
『ケルベロス』の三人も、無言で行動を開始した。
スキンヘッドは、ジークを追いかけて逃走路へ身を落とし、サングラスは、隊員達の後に続き、最後まで一度も動かなかった茶髪の男は、ポケットから通信機を取り出すと
「応答、応答」
雑音混じりに返ってきた返事に、事務的に答えていき
「デルフォール・ジークに賞金をかけて。賞金は……」
少しだけ間をあけた所を見る限りでは、恐らくジークへの懸賞金を考えているのだろう。
危険性、強さを考慮した結果は
「認定はAクラス、賞金額は一億クライ」
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