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その頃、ジークは暗闇を手探りで歩いていた。
落下先には、クッションが設けられていたために痛みはどこにもない。
銃声が止む前にジークは、歩きだした。
「くそ、長いし何も見えねえ……」
かれこれ数十分は休憩を挟まずに足を進めていたが、出口は視認できずに苛立ちが募っていく。
こうしている間にも、『ケルベロス』や親衛隊が追いかけて来るのではという焦りは、ジークにとってマイナスでしかなかった。
疲労と緊張で憔悴しきった顔付きで懸命に動いていると、突然に視界が広がった。
夜なので明るさには、殆ど変わりがないが間違いなく外だ。
ジークは安堵から、その場に座りこむ。
「やった……逃げ切った……」
王宮が、遥か後方にあるのを確認すると、ジークは両腕を高々と掲げた。
更には、逃走路を抜けた先には大きな門がある。
出国、入国を取り締まる番兵はいるものの、深夜は奴隷階級の者達が番兵の変わりを務めていた。
つまりは、ジークにとっての味方である。
ジークは、門の前に仁王立ちしている二人に近づいていき
「全員、逃げ切ったか?」
と、声をかけた。だが、二人はジークへ返事をする所か、まるで存在を知らないかのようにただ一点を睨みつけている。何度か繰り返してみたが、応答がないので、痺れを切らしたジークが一人の肩を乱暴に掴んだ瞬間、ごとり、と音をたて首が地面に落ちた。
予想できなかった事態にジークの思考は完全に停止したが、すぐにかぶりを振って思考を回転させる。
まず、死体の体温からそう時間は経過していない。
つまりは、どこかに脅威が隠れている。
答えを導き出した途端に、ジークは警戒を強化した。
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