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油断なく周囲に視線を送りながら後退していく。
門を開くには、レバーを下ろす以外には方法はなく、またも手探りで探すしかなかった。忙しなく視線を動かし、レバーに近づいて行く。
距離も僅かに迫った時、背中越しに筒状の何かが当てられた。
ぞくり、と背中に冷気が走る。
「動かずに、ゆっくり両手を挙げるんだ」
低く抑揚のない声に従い、ジークは両手を挙げた。
「……誰だ?」
ジークの警戒をかいくぐり、ましてや背後に回れるなど、想像もしなかった。
声から察するに男だろう。
「デルフォール・ジーク、君に逃げ場はないよ。大人しく捕まってくれないかな?」
「……残念だが、それはできないな」
「そうか……出来れば乱暴はしたくないんだよ。お互い痛いのは嫌だろう?」
「そうだな。だが、俺は捕まる訳にはいかない」
言い終えた瞬間、倒立のように前のめりに倒れた。
そして、男が押し付けていた筒状の物を蹴り上げ、それが落下する前に、ジークの左拳が男を捕らえる。
「悪いな……」
俯せに転がっている男を一瞥して、ジークはレバーを上げた。が、人が通れる程のスペースが開いた時、殴られた男が静かに立ち上がった。
尋常ではない殺気を感じたジークが振り返ると、そこには、門の開閉を担当していた二人の内の一人がいた。
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