第一章 始まり

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「お前……なんで……」 声にならず、口だけを動かすジークを前に、男はにまりと笑みを洩らす。 「なんで、か……俺はこいつの皮膚を借りてるだけなんだけど」 皮膚、と怪訝そうに言い返すと、首の皮膚を両手で掴み一気に引き上げた。現れた男は、『ケルベロス』にいた茶髪だった。 顔に付着した血を手で拭い 「完璧な変装だったろ?」 「この糞野郎が!」 怒りがジークを支配した。 鬼の形相で殴りかかったが、一撃を避けられると、今度はジークが地面を舐めた。 「疲労しきった君じゃ俺には勝てないよ。それとも、『キメラ』の力を使う?」 「……黙れ」 「王宮の兵士を全滅させたのも、『キメラ』の血が覚醒したからだろ?」 「黙れ!」 「認めたらどう?『キメラ』である自分を……」 言い切る前に、ジークの両目が、かっ、と見開いた。 「来た……」 そう呟くよりも早く、ジークは男の背後に回っていた。判断が遅れた為に、右側頭を蹴られ、追撃の左拳が男を起き上がらせる。 攻撃は止まずに、顔面に右拳が埋まった。 勝利を確信したジークは、雄叫びを上げる。しかし、腹部に突き刺さった膝が腹筋を貫き内臓に食い込んだ。 「良いよ……ジーク、もっとやろう!」 「がああああ!」 仕切り直しとなった闘いは、二人の中心に出来た小さな穴により止まった。 銃声の出所にいるスキンヘッドに二人が注目する。 「そこまでだ。双方、手を挙げろ」 正常な意識が戻っていたジークは、大人しく両手を上げ、茶髪はほくそ笑みながら 「隊長、俺は味方ですよ?」
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