157人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前……なんで……」
声にならず、口だけを動かすジークを前に、男はにまりと笑みを洩らす。
「なんで、か……俺はこいつの皮膚を借りてるだけなんだけど」
皮膚、と怪訝そうに言い返すと、首の皮膚を両手で掴み一気に引き上げた。現れた男は、『ケルベロス』にいた茶髪だった。
顔に付着した血を手で拭い
「完璧な変装だったろ?」
「この糞野郎が!」
怒りがジークを支配した。
鬼の形相で殴りかかったが、一撃を避けられると、今度はジークが地面を舐めた。
「疲労しきった君じゃ俺には勝てないよ。それとも、『キメラ』の力を使う?」
「……黙れ」
「王宮の兵士を全滅させたのも、『キメラ』の血が覚醒したからだろ?」
「黙れ!」
「認めたらどう?『キメラ』である自分を……」
言い切る前に、ジークの両目が、かっ、と見開いた。
「来た……」
そう呟くよりも早く、ジークは男の背後に回っていた。判断が遅れた為に、右側頭を蹴られ、追撃の左拳が男を起き上がらせる。
攻撃は止まずに、顔面に右拳が埋まった。
勝利を確信したジークは、雄叫びを上げる。しかし、腹部に突き刺さった膝が腹筋を貫き内臓に食い込んだ。
「良いよ……ジーク、もっとやろう!」
「がああああ!」
仕切り直しとなった闘いは、二人の中心に出来た小さな穴により止まった。
銃声の出所にいるスキンヘッドに二人が注目する。
「そこまでだ。双方、手を挙げろ」
正常な意識が戻っていたジークは、大人しく両手を上げ、茶髪はほくそ笑みながら
「隊長、俺は味方ですよ?」
最初のコメントを投稿しよう!